2周年を迎えた季刊誌SEASONS夏号のショートストーリーをご紹介させていただきます。
創刊号から、表紙イラストをイメージしたショートストーリーを描いております。
毎回、この広場で記事にしてご紹介させていただいているのですが、
今回は1部完結3部作となったので、掲載を懸念しておりました。
(私の記事は長い!! ので。。。)
ですが、もったいないことなのですが リクエストのメールいただきました。
本当にありがたく思います。
アリス・・・

お調子ノリなので。。。

そぉーっと掲載させていただこうと思いました

。
エピソード1はエピローグとして、2,3と本ストーリーに入ってゆきます。
今回のサニーさんイラストは壮大なスペイシーワールドなので、
1話にはまとめきれなくて3話となりました。
などなど。。。

大見栄を書いていますが、足りないのは紙面ではなく作者の腕。。。

立ち読みで構いませんので、拙著ながら3話まで通読していただけましたらとてもうれしいです

画像の1枚はサニーさんの書かれたカルピスキャンディーのご紹介^^
冷蔵庫でヒエヒエにしたキャンディーを口に頬張りながら、この記事を書いております♪
「The sea in Galaxy」 (銀河系の海)
エピソード1 【K18のTWINS】
1346年、カレル1世が神聖ローマ帝国皇帝に君臨し、
4世の時代には首都をプラハと定め「黄金のプラハ」として、その栄華を歴史に刻んだ。
王郷の限りをつくしたプラハ。
笑いと踊りに包まれたその地は潤い、銀河の流星さえも意のままに操ると言われた。
夜空を揺るがす時空さえも、帝王の意のままに・・・・
「おまえ、聞こえてるのか!!」
若い踊り子の顎を掴んだ男は続けて叫んだ。
「オイ! 笑えって言うのが分からねえのか!」
ヤンヤの声援を上げて、はやし立てる男達。
その隙間を埋めるように飛び跳ねながら、首からつるした缶を差し出す髭面男は、
客達からを投げ入れられるコインの音に酔いしれていた。
ぼやけたライトの下にいる踊り子の、微動だに動かぬ眉の下にある目はただ一点を見据えている。
「チッ! おまえのその腕環が気に食わねえんだよ!」
男は踊り子の視線を追い、上腕にはめている腕環に手を伸ばした。
しかし、男の手がそれに触れる前に、踊り子は滑らかに手首を返してうずくまりながら、
男の腕からすり抜けるように踊り始めた。
踊り子は両膝を広げ、砂地を這うかのような妖しげな動きでテントの外へ出て行った。
「ヒュー!」
「アンコールだ!」
さまざまな口笛が入り混じった酒場には、ファンキーな曲が流れ出した。
「危ないところだったな」
姿は見えないが、低い男の声がした。
「いつものこと」
「ここも潮時だな。今夜のうちに発てよ」
踊り子は腕環に手を置いたまま、声にならない吐息を吐いた。
おぼろげな月灯りだが、くさび模様がはっきりと読みとれる。
夜空の気の向くままにと言うのだろうか、ある彗星が見え隠れする夜は
腕環に薄っすらとまばらにルーン文字が浮かび上がるのだ。
「今日の文字は多いな」
ぶっきらぼうな男の声がそう答えると、踊り子の手に力が入った。
「止めとけ。外れやしない」
「チィッ!」
「さっきの男と同じだな」
「アァー!」
「今度は団長の声そっくりだぜ」
舌打ちをした踊り子は、男の笑い声をかき消すように腕を振り払った。
町はずれに建てられたテントからは、まだ冷めやらぬリズムが聞こえる。
異国から異国へと旅するジプシーテント。
ここは歌姫と呼ばれる踊り子が、この楽団に入ってから2つ目の砂丘だった。
いずこから生まれ、いずこへ旅するのか。流浪人があつまるジプシーテントは、若い女が身を隠すには格好の場所だった。歴史の時空が起こした裂け目から抜け落ちたプラハの真珠。
「宙と海が繋がる地にてプラハの黄金が降り注ぐ時、パピルスの名を刻む者、永遠に封印されん」
いつの世代から受け継がれてきたのだろう。
母が誰なのかさえ分からぬ歌姫が、ゆりかごの中にいる時から聞かされてきた、
うぶ着に書かれていた予言のような言葉だった。
歌姫が歩きだした頃には、右腕にはめられていた腕環の珠はまばらで一重だった。
1人で踊り出した頃には二重に、施設を飛び出した年には三重になっていた。
黄金の珠に自分以外が触れてはならないことだと知ったのも、この頃だった。
珠に触れた者にはさまざまな異変が起こった。
なぜだろうか、歌姫が子供の頃は何もなかったと言うのに。
成熟した娘になり、男どもが群れをなして恥辱しようとするたびに、
腕環に秘められた音で男の動きを止めた。
歌姫だけが聞き分けることのできる歌声で。
歌姫が岩場に停まっているキャラバンカーの扉を開ける前に、いきなりドアが開いた。
中にいるのは誰よりも会いたくはないが、礼儀を尽くすなら会見をするべき相手、団長だった。
「おっと! これはこれは、歌姫様。こんなむさくるしいところへようこそ。
ささ、我が王宮へ」
舌舐めずりをするねばった声で腰を曲げながら手招きをした。
それは客達の間でコインを集め回る時と同じ動作だった。
歌姫は黙って紙を差し出した。
団長は薄暗い灯りの下に立ち、広げた紙を見るとその態度が一転した。
「給金だと!」
歌姫は手を広げた。
「チッ!! きさま、いったい何様だと思っている!
日払いにしてほしければ舞台で笑え。舌足らずな話し方しかできない脳なし女め!」
「給金を」
表情を変えずに言う歌姫に、団長は筋肉を浮かせた腕を上げた。
同時にその姿は、憎々しげに開いた口元が歪んだままの表情でその場に崩れ落ちた。
しかも体が痙攣するようにヒクヒクと動き続け、客達から集めたコインが缶から転がり出ている。
「早く集めな」
やはり姿は見えないが、可笑しげな男の笑い声が聞こえる。
数年前、波打ち際で澄んだ星空を見上げて歌う一人の少女がいた。
その清らかな歌声は天を揺るがし、大地に沈みゆく太陽を深海に眠らせた。
ほのかに広がるココナツの香りが甘く舌を包み込むように。
少女は海面に手を浸してから、果てしのない空へ届くようにと、
海のしずくを夜空に向かって弾じき上げた。
「おまえは、いつも歌ってな」
「えっ?」
「喋りが苦手なら歌えばいいじゃねえか。笑えないのなら歌えばいいだろう」
唐突に聞こえた声。それが腕環の中に住む男、ヤーンとの出会いだった。
彼は、笑わない と言わずに 笑えない と言った。
その一言が、歌姫のすべてを語った。名前に添えられた不可思議な手紙と腕環の為に、
異端児扱いを受けてきた者に笑いたい気持ちなど浮かばない。
そして話す言葉に返事をもらえぬ者に、声は必要なかった。
「自由がほしい」
それは、ヤーンに打ち解けて初めて明かした、生まれて初めての願いごとだった。
歌姫は腕環に手を置きながら切に訴えた。だが、腕環の声が語った。
「お前の腕から珠が離れない限り自由はない」
「なぜ?」
「血。俺達の中に流れるプラハの血がそれを許さない。
古代エジプトでは、パピルス草で作らせた紙に隠れ文字を刻んだ。
今じゃ、お前と俺だけがプラハ黄金時代の末裔だろう。
俺は王家の墓を守る為に腕環に封印された」
ヤーンは全てを明かさなかったが要(かなめ)だけは語った。
プラハ王宮にふた粒の真珠として生まれたヤーンと歌姫だが、
黄金時代に双子は不吉な流星と言われた。
その為、魔同士は成就の刻限が来るまで明かされてはならぬ秘宝の番人として、
1人を腕環に封印したのだった。
「ばかげている。誰が死者の墓など!」
「では、ピラミットは何のためにあると言う。どうして人々はファラオの墓に虜となる?」
歌姫が黙っているとヤーンが答えた。
「世界を欺いても、プラハの歴史は封印されなければならない」
…生まれ落ちた時、もし私とヤーンが入れ替わっていたとしたなら。
「俺達のルーツは後で考えな」
ヤーンの声でハッと歌姫の意識が戻った。
臨まぬ運命を背負い、命(せい)を受けた二粒の真珠。彼らは古(いにしえ)の予言に従わなければならない。
「今夜は星の動きが早い。予言の地はオアシスではないのかもしれない。あの流星が落ちる方角へ急ごう。何かが起る予感がする、夜が明ける前にな」
遠い地に歌姫を飛ばしたヤーンは、疲れきって腕環の中で眠っているのだろうか。
心動を感じない。歌姫は満天の星空を見上げた。
予言が成就した時、ヤーンと自分はどうなるのだろうか。
王位の使命を終えたならば、どちらか一方が永遠に封印されるかもしれない。
一人で生きてきた歌姫にとって、ヤーンは分身であり、そしてかけがえのない恋人だった。
声を出せずにむせび泣く歌姫に寄り添うように、流星群が次々と夜空をかけ巡り始めた。
やがて、地平線がうっすらと暁色に染まり出すと、
ヤシの木の下で歌姫は溜息とも安堵とも取れる声を漏らしながら金の腕環をはじこうとした。
しかし、歌姫の動きが止まった。腕環に刻まれた記号と文字が鮮やかに浮かび始めたからだ。
そして腕から決して離れなかった因縁の数珠が、
まるで疼(うず)くように波打ちながらその隙間を広げてゆく。
遠い記憶の中、確かに聞いた時空の響きを挙げながら。
歌姫の上腕に巻きついていた3連の数珠の腕環が手首にまで滑り落ち、
今や鮮明なルーン文字が刻まれた金のブレスレットとなった。
そしてブレスの皮が剥がれるように、金の輪が指先を滑り落ちていく。
同時に輪の中から人の手が現れ、骨肉が続いていった。
それは海の深さと天の高さを求めるように伸び続け、
人の形となり、歌姫を光年の海へと誘い出した。
新しい時空の扉が開いたのだ。
砂丘に浮かぶ海に波が押し寄せると、呪縛が解けた歌姫がこみ上げるように笑い声を上げて歌い出した。
その歌声に導かれ、海に流れ落ちた流星が歌姫の耳に跳ね返り、光の雫が天を覆った。
「自由よ! 私達、もう自由なのよ! ヤーン、全てが終ったわ!」
「いや、これが始まりだ」
ヤーンの声が合図のように歌姫の腕を締め付けていた腕環の痣が消え、
ヤーンの手にその二筋の線が浮き始めると、歌姫の歌声が、そしてその姿が、
ルーン文字のブレスに閉じられてゆく。
宙と海が一つにつながるこの地にて時空の予言が成就されし現在(いま)、
光年の誓いが永遠に受け継がれた。
砂地に残された数珠のブレスにヤーンが3度口づけをした。
「宙と海が繋がる地にて蘇る日まで、皇女は王の中に封印されん」